長女が中学生の頃、日曜日の昼下がり。
娘は、眼に涙をいっぱいにためて、私に向かって、吐き捨てるように言った。
「お父さん、私の事が信用出来ないの!」
「そこに行くのだけは、駄目だ。」
「なんで、なんで、変なとこじゃないし、友達も一緒なんだから?」
「それじゃ、私もついて行く。」
「なんでそんな嫌がらせすすんの!」
「なんで信用してくれないんだよ!」
娘は、号泣しながら叫んだ。
「絶対に、行くのは許さない。」
「行くんだったら、私がそこに乗り込む。」
娘は過呼吸を起こし、崩れるように倒れ、そのまま泣きながら寝込んでしまった。
いつもの親子喧嘩ではなかった。
数時間前に女房から聞いたことだが、娘が行くという家はある宗教団体の支部で、ティーパーティに招待されたらしい。
まだ、統一協会もオウム真理教も世間には知られてない時期だったが、聞いたこともない宗教団体に、胡散臭さを感じた。
数日後、私は娘と代官山のメキシコ料理店で。
「私は、君を信用してない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「将来、君が私の元を巣立ったとき。私は、どんな時も、何があっても…世間が君を糾弾しても、世界が敵に回しても、私は君を信じる。」
「その時は何があっても、私は君の味方だ。」
「それまでは、決して君を信用しない。」
娘は、大粒の涙をポロポロと流しながら…「私、お父さんの娘でよかった。。。」
昔話である。
今、彼女は三十路の坂をとうに越したが、まだ、私は娘を信用できないでいる。
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